「イサナと不知火のきみ」(たつみや章)

イサナと不知火のきみ

イサナと不知火のきみ

 アマゾンをみると「この本を買った人はこんな本も買っています」に角川ルビー文庫がずらっと並んでるんですから、知らない人が見たらびっくりするでしょうね。講談社のメルマガによると、本作は著者初の「女の子を主人公にした物語」だそうです。これはちょっとした事件かもしれません。
 たつみや章の和風ファンタジーの新シリーズです。海の民綿津見一族の娘イサナは龍王の子の封印を解いてしまい、いざこざに巻き込まれてしまうことになります。
 和風の海洋ファンタジーという着眼点は面白いと思います。ファンタジーの王道に忠実に名前を重要なアイテムとして使ったり、海の底の異界を魅力的に描写してみせたりするあたり、たつみや章ならではの手堅さを感じます。しかし基本はラブコメ。少女漫画的欲望にストレートに答えているところがやはり手堅いです。タイトルからもわかるとおり、ようは女の子と王子様の物語です。初めて「女の子を主人公にした物語」に挑む著者がこの王道のシチュエーションをどう処理するのか、続きが気になります。