「木の上の家」(ビアンカ・ピッツォルノ)

木の上の家 (イタリアからのおくりもの―5つのちいさなファンタジア)

木の上の家 (イタリアからのおくりもの―5つのちいさなファンタジア)

 「イタリアからのおくりもの 5つのちいさなファンタジア」と題して汐文社からイタリア児童文学のシリーズがはじまりました。イタリアの作品はこれまであまり訳されることがなかったので楽しみです。本作はそのシリーズの第1弾です。ビアンカ・ピッツォルノ作品の邦訳としては3作目。
 都会のマンション暮らしがいやになった女の子アグライアと友達のビアンカは誰にも秘密で木の上で暮らすことにします。ところが木にはベッカリスさんという気むずかしい大人も住んでいました。このやっかいな隣人といがみあいつつ、いろいろな騒動が起こります。
 木の上に家を造って暮らすという夢のある設定の話ですが、それだけでは終わりません。ビアンカが木にいろんな木の枝を接ぎ木して、いろんな果物がなるように改造するというのは子供の願望に答えている夢のある設定だと思います。しかしビアンカは、隣人のベッカリスさんにいやがらせをするために食肉植物を移植したりもします。木の上に水道を引きたいと思ったふたりは、水道屋さんを拉致してきて目隠しをし、無理矢理風呂やトイレを取り付けさせます。子供の願望に答えているのはいいのですが、明らかに犯罪の域に達しています。もしかすると良識ある大人は眉をひそめるかもしれませんが、ビアンカが作中で言っているように、「お話のなかだからいい」のです。
 イラストがクェンティン・ブレイクなのでダールと比べてしまいますが、このひとはもしかしたらダールに匹敵するくらい好き放題している人なのかもしれません。なにしろ初邦訳の作品があのスカトロ児童文学「ラビーニアとおかしな魔法のお話」ですし。これなら子供に支持されるはずです。さらにピッツォルノ作品の邦訳が増えてほしいと思います。