「ベラスケスの十字の謎」(エリアセル・カンシーノ)

ベラスケスの十字の謎

ベラスケスの十字の謎

 名画「侍女たち(ラス・メニーナス)」に描かれた謎の人物は何者なのか?ベラスケスの胸の十字はなぜ描き加えられたのか?ベラスケスの「侍女たち」をめぐる謎が、「侍女たち」に描かれた人物のひとり、小人の少年ニコラスの視点から綴られたミステリアスな物語です。
 ニコラスは小人だったためにイタリアからスペインの宮廷につれてこられます。様々なハンディキャップを抱えながら宮廷という異様な世界でうまく立ち回っていくニコラスの様子には迫力がありました。
 彼はベラスケスの絵のモデルになるという僥倖を手に入れますが、ベラスケスの周りで暗躍するネルバルという怪しい男にも関わってしまうことになります。ネルバルはベラスケスの絵画制作に深く関わっていて、ふたりの間には重大な秘密がありました。ニコラスがネルバルの家でまだ完成していない絵の幻影を見る場面は圧巻です。
 200ページもない短い作品ですが、読み応えは充分でした。