「ハーフ」(草野たき)

ハーフ (teens’ best selections)

ハーフ (teens’ best selections)

 主人公は小学6年生の真治。かれの両親のなれそめはきわめて平凡なものでした。父さんが川原の段ボール箱の中にいた母さんをナンパしたのがはじまり。父さんは母さんのヨウコのきれいな毛並みに一目惚れしたのだといいます。父さんは人間で母さんは犬。だから真治はハーフということになります。
 ファンタジーではなくてリアリズムなので、もちろん本当に真治の母親がヨウコだなんてことはありません。これは父さんの妄想で、真治もそんなことは信じていません。家庭内のプチ狂気というスリリングなテーマを設定しています。親子といえど他人ですから、真治は父さんがどの程度本気でヨウコが奥さんだといっているのか判断できません。親子間の絶望的な断絶、それでも歩み寄りを見せる様が感動的に描かれています。
 父さんの狂気は別段人に迷惑をかけるようなものではありませんが、それでも異質なものは排除され、息子である真治もそのことで学校で陰湿な迫害を受けることになります。異質なものに対する社会の不寛容さも問題提起されています。
 ところで、前作の「ハチミツドロップス」、そして今回二作続けて草野たき作品の登場人物にある特徴が見られたのでここで断言してしまいましょう。草野たきツンデレキャラがお好みなようです。本作に登場する三浦花子はバレンタインに主人公を罵倒しながらチョコを渡すような娘で、狙っているとしか思えません。