「つきとうばん」(藤田雅矢・梅田俊作)

つきとうばん

つきとうばん

 あの藤田雅矢が絵本をだすというので驚愕したのですが、実はこれは新作ではありませんでした。かの「糞袋」でファンタジーノベル大賞を取った1995年にJOMO童話賞で佳作になった作品に、梅田俊作の絵を加えて今回絵本化したようです。ということは彼にはもともとこっち方面の素養があったのですね。ぜひこれからも児童向けの本を書いてもらいたい。藤田雅矢は読者を異常な世界に導く圧倒的な筆力を持っており、ファンタジーノベル大賞出身作家の中でわたしがもっとも評価している作家です。欠点は寡作なことだけ。彼なら児童書SF冬の時代を終わらせる救世主になれるかもしれません。
 さて、本作は「つきとほしのたね」を畑に植えて、つきやほしを育てるというお話です。星が地上から天に舞い上がっていく幻想的な光景、ほしやつきを食べるという奇想。藤田雅矢ならではの不思議な世界が繰り広げられています。梅田俊作の絵も闇が効果的に使われていてよいです。