「アフリカのシュバイツァー」(寺村輝夫)

アフリカのシュバイツァー (フォア文庫)

アフリカのシュバイツァー (フォア文庫)

寺村輝夫のアフリカ日誌全1冊 (寺村輝夫全童話)

寺村輝夫のアフリカ日誌全1冊 (寺村輝夫全童話)

人類はみな兄弟、ただし白人が兄で黒人は弟。

 ひとひねりした視点から編まれたシュバイツァーの伝記です。アフリカに渡った寺村輝夫は現地でシュバイツァーは日本で言われているように「原始林の聖者」「アフリカの光明」として尊敬されておらず、むしろ「植民地主義の手先」と批判されいている実態を目の当たりにします。そしてシュバイツァーの功罪を洗い直す事を決意します。
 本書はシュバイツァーの黒人に対する差別的な見方を暴き立てています。さらに、「文明」国であるヨーロッパ諸国が「未開」であるアフリカに対していかに「文明」的な仕打ちをしたかを歴史を追いながら丁寧に解説しています。
 「偉い人は偉いんだから尊敬しなさい」という小学校の道徳教育レベルから一歩踏みだし、物事を批判的に多角的に見る視点を養うという意味で最良の教科書になっています。戦後の児童向けノンフィクションの中で屈指の傑作といえましょう。屈指の傑作なんですけど……、やっぱり絶版ですか。現在では理論社の全集の8巻で読めますが、全集という形態では子供は手に取りにくいでしょう。フォア文庫での復刊を望みます。