「タフィー・トフィーと魔法の箱」(はやしひろし(RED) 小柳順治)

タフィー・トフィーと魔法の箱

タフィー・トフィーと魔法の箱

 園児が箱詰めにされてる表紙に引いて今まで放置していたのですが、もったいないことをしていました。この本は文句なしに面白いです。
 魔法の世界キューブリアで活躍する10才児(幼稚園児ではなかったらしい)の魔法弁護士タフィー・トフィーを主人公とする法廷ファンタジー。手下には7才児のハードボイルド探偵タイニィ・ボギーを従え、ライバルの15歳の少女検察官ソルティー・バイオレットと仲良く争っています。
 綿密に作り込まれている世界設定、奇想天外かつおばかな事件の数々、どれをとっても非の打ち所がありません。魔法の世界が舞台といいながら、第二話ではロボットの反乱をテーマにし、第四話では「ミクロの決死圏」ごっこをやったり、SFネタを入れているのもいい感じです。
 しかしなんといってもこの作品の一番の魅力は、作品世界が善意にあふれていることです。毒が全くない。法廷ものなのに悪人はまったく出てきません。主人公が弁護士としてひたむきに被告人を守ろうとする様に感動できます。この本は見かけによらず、親が安心して子供に手渡せる本なんですよ。だからもっと親や教師に受けるような装丁にするか、でなかったらカラフル文庫で出せばよかったと思います。ジャイブは何を思ってこの本をハードカバーで出したのでしょうか。