「レクトロ物語」(ライナー・チムニク)

レクトロ物語 (福音館文庫 物語)

レクトロ物語 (福音館文庫 物語)

 福音館文庫はここしばらく目を瞠るがんばりを見せていますが、なかでも注目すべきなのはこの完訳版の「レクトロ物語」でしょう。
 うっとりと夢にふけることが大好きなレクトロが様々な職業遍歴を繰り広げる物語。レクトロが就く仕事は道路掃除夫、駅長代理、飛行船のビラまき、小包配達人、楽団、消防士などバラエティ豊かですが、かれはいつも最後は首にされてしまいます。これをフリーターの受難小説と読み替えるとかなり鬱になるかもしれません。
 物語はまさに「うっとりと夢にふける」ように夢想的で、チムニクの独特の想像力を楽しめます。物語に登場するニッポン人のユニークさなどには仰天させられます。しかし一方、寓話的な手法で現実のシビアさを見据えているのもこの作品の特徴です。
 読んで絶対損のない一冊です。最終話のぶっとび具合にはきっと驚かされることでしょう。
 それにしてもレクトロかわいすぎです。癒しキャラとしてキャラクター商品を売り出せば儲かると思うんですけど。