「あやかし修学旅行」(はやみねかおる)

 修学旅行編。事前の資金調達エピソードあり、旅行先に伝わる伝説あり、UMAあり、夜の枕投げあり怪談あり、さらにお約束のラブコメありの盛りだくさんの内容です。
 おまけに修学旅行のしおりがついていて、バスの座席表にミステリ関係者の名前をちりばめている遊び心もうれしいです。一番後ろの座席でひとりあまってしまった石崎幸二は今何をしているんだろうとか、いろいろ考えてしまいます。太田克史は名前だけの登場でなく、本編でも活躍していますね。彼は男の中の男として描かれています。
 全体的にまとまりがなく散漫な印象なのが欠点といえば欠点なのですが、それは修学旅行という学生にとっての最大のイベントのふわふわした雰囲気を再現する上で適切な手法であるとも思います。だからこそ逆に最後まで引っぱってしまった鵺のエピソードは余計だったように感じます。夢水の推理はホームズの職業当てなみに牽強付会なのですが、それが的中してしまい犯人に救いを与えてしまう。名探偵の悪しき権力性が露骨に出ていて好感を持てません。