「ヒカリとヒカル」(夏緑)

 夏緑山本ルンルンとは、ポプラ社も濃い作家をつれてきたものです。
 ボーイッシュな少女の光理と読書好きで成績優秀な少年光流、この双子が主人公です。光理が親友の花菜から初恋の相談を受けるところから物語がはじまります。二人は頭のいい光流を頼りますが、これが完全な人選ミスでした。光流には本で読んだ知識しかなく、しかも小五にして理想の女性が紫の上とラノベのヒロインいう壊れっぷり。それでもわからないなりにラブレターを代筆したりデートをプロデュースしたり奮闘を見せます。
 恋愛をしなくてはならないという圧力に子供達が踊らされるさまが愉快に描かれています。日本には「同じアホなら踊らにゃソンソン」という金言がありますが、やはり踊らなくてすむなら踊らないにこしたことはありません。踊らされる子供が増えて騒動がエスカレートしていく様子はギャグとして秀逸です。最終的においしいところは恋愛沙汰と全く無関係なキャラがさらっていくところが皮肉でいい感じです。恋愛との向き合い方を理性的に説いている非常に教育的な作品といえましょう。
 教育的なだけでなく物語としての出来もいいです。ベタながら後半のスポ根展開の燃え度は高く楽しめます。非当事者だった主人公の双子に土壇場で見せ場を用意する構成のうまさ。さらにメガネを取ったら美形というお約束の落ち。難しいことは考えずに最後まで一気に読める娯楽作品です。