「幽霊派遣会社」(エヴァ・イボットソン)

幽霊派遣会社

幽霊派遣会社

 孤児のオリヴァーは突然ヘルトン館というものすごいお屋敷を相続することになります。それをよく思わないいとこのスノッド=ブリトル兄妹は、オリヴァーをなきものにするために幽霊派遣会社に目をつけます。幽霊派遣会社とは、行き場のない幽霊に引き取ってくれる人間を斡旋する会社です。スノッド=ブリトル兄妹はオリヴァーをショック死させるために、派遣会社にとびきり恐ろしい幽霊を注文しますが……。
 また孤児かよ!?とか、色覚障害をネタとして使うのはいかがなものかとか不満点もありますが、ユーモアにあふれていて、全体のまとまりがよくしっかり予定調和に終わっていて、物語の楽しさを味わわせてくれる作品になっています。
 幽霊派遣会社というメインのアイディアが光っています。20世紀の戦争による大量死という悲惨な出来事を、街に幽霊があふれていて住宅難で困っているというばかばかしい現象に結びつけたのがうまい。反戦を訴えるにしても、時にはこうした変化球勝負の方が説得力を持つことがあります。