「少女戦士シュリー  黒き魔神の森」(大林憲司)

黒き魔神の森―少女戦士シュリー (フォア文庫)

黒き魔神の森―少女戦士シュリー (フォア文庫)

 棒術が得意なヒンディーの少女シュリーが主人公。ある日彼女は、遠い島国ワクワクから聖者バギャバディの教えを求めてはるばるヒンディーにやってきた少年ヒデマルを助けます。ヒデマルの求める聖者の寺が危険な「黒き魔神の森」にあることを知ったシュリーは、こっそり棒術の師匠の棍を盗んで、ヒデマルと白ねずみのガーシャをともなって森に旅立ちました。
 ファンタジーの舞台としてヒンズー教世界を選んでいるのが珍しいです。こちらは多神教の世界なので、えせヨーロッパより日本人は親しみを持てると思います。
 主人公のシュリーは他人のためにがんばれるいい子ですが、幼さゆえに道を踏み外してしまうこともあります。そこをちゃんとした大人が見守ってくれていて、なおかつ日常と地続きに存在する神々も味方になってくれる。たいへんあたたかみのある世界が描かれています。
 キャラクター造型のうまさ、丁寧に作り込まれた世界設定、戦闘シーンの描写の綿密さ、どれをとっても完成されたエンターテインメントといえましょう。