「ももいろ荘の福子さん ぼんたネコババの巻」(村上しいこ)

ももいろ荘の福子さん ぼんたネコババの巻 (おはなしフレンズ!)

ももいろ荘の福子さん ぼんたネコババの巻 (おはなしフレンズ!)

 関西ギャグに彩られた人情噺「ももいろ荘の福子さん」の第三巻です。
 ももいろ荘でおかあさんと二人で暮らしているボンタくんに、拾った財布からお金をネコババした疑いがかけられてしまいます。そのうえボンタくんのおかあさんに恋人ができた疑惑まで発生し、ももいろ荘は大騒ぎ。どうする、小学生管理人福子さん。
 と、あらすじを見ればシリアスになりそうですが、心配はいりません。お約束どおりぶっちゃん先生が全てぶちこわしてくれます。たよちゃんとぶっちゃん先生のボケはますますすさまじくなっています。特に先生は期待を裏切りません。
 今回はラーメン屋「ちゃらんぽらん」のおっちゃんが光っていました。もっさりした幸薄そうな外見のおっちゃんですが、意外にも彼は町の哲学者でした。彼の言葉は平易ですが、言っている内容は難しいので福子さんにはうまく伝わりません。コミュニケーションの困難さを乗り越えようとする様が真摯に描かれています。実はこの作品はコミュニケーションへの絶望から出発しているのではなかろうか。

「ほな福ちゃんにきくけど、あしたはなんでやってくるかわかるか?」
「あしたはな、福ちゃんがしんじてるからやってくるねんで」