「あの日、指きり」(那須正幹)

あの日、指きり (草炎社フレッシュぶんこ)

あの日、指きり (草炎社フレッシュぶんこ)

 ネタがネタだけにどう紹介したものだか悩んでしまいますが、「少年の日の美しい思い出」ということで押し切ればたぶんOKだと思います。
 物語は画家の田頭よしたかの実体験がモデルになっているそうです。昭和30年代の夏の日、小さな港町で少年たちは一人の女の子に出会います。女の子の母親は子供には見せられないショーをしている芸人さんで、興業のために娘とこの町に訪れていました。女の子はお母さんのショーを見に来るように、少年たちに約束を求めます。
 まったく無駄のない小品なので、純粋に物語の叙情性を味わえます。やはりこういう作品でこそベテランの芸が生きてきます。
 ネタがネタなので子供におおっぴらにすすめるのは無粋でしょう。薄暗い図書室の隅っこに置いてほしい作品です。