「筒井敬介おはなし本 もうひとりの赤ずきんちゃん」(筒井敬介)

 タイトルの通り、昔話のパロディが収められた本です。
 「もうひとりの赤ずきんちゃん」は赤ずきん赤ずきんの絵本を持っていて、オオカミに読んでもらうというメタフィクション風のお話です。赤ずきんに対するオオカミの愛情の滑稽さがよいです。
 「かちかち山のすぐそばで」は、かちかち山の出来事のとばっちりで不幸になってしまったオオカミの物語です。うさ耳をつけたオオカミというシュールな絵を太田大八が描いているというだけでもう大満足です。鯛が食べたくて殿様になろうとし、動物を食べるたびに呪われるオオカミはやはり滑稽でおもしろいのですが、深く考えればこわい話です。
 「ハヤガメくん」は「ウサギとカメ」の後日談。ウサギとの再戦にむけて周囲から過剰な期待をかけられたカメはどう切り抜けるのか。気の抜けた落ちが平和的で、ほのぼのとした気分にさせてくれます。