「ぽっぺん先生とどろの王子」(舟崎克彦)

ぽっぺん先生とどろの王子

ぽっぺん先生とどろの王子

 ぽっぺん先生シリーズの第4作。ぽっぺん先生がハニワの世界に迷い込むお話です。
 それぞれ特徴的な姿形をしたハニワたちは、自分たちが何者なのかわからずとまどっていました。そこに巫女のハニワが現れ、ハニワたちにはある使命のためにそれぞれ役割が与えられていることを教えます。百姓のハニワは畑を耕し、役者(わざおぎ)のハニワは踊り、泣き女のハニワは泣く。赤ちゃん言葉しか話せない幼児のハニワになってしまったぽっぺん先生にも思いがけない役割が与えられます。ところが4人の武人のハニワにだけは役割が与えられませんでした。、巫女はただ「おぬしらは、ただいるだけでよいのじゃ」というだけです。この4人の武人が自分たちの役割に目覚めた時、ハニワの世界は早くも終末を迎えることになります。
 たったの200ページで国家の誕生から崩壊までを描いた、ばかでかいスケールの喜劇です。小さな世界が崩壊していく終盤の狂躁はすさまじいの一言です。
 物語としてのおもしろさはもちろん保証できますが、この作品がひとつの国家論として成立している点も見逃せません。人々に与えられた役割分担は単なるシステム上の問題でしかないことを暴いてしまった、非常にスリリングな作品です。