「魔界屋リリー 青い瞳の人食いウルフ」(高山栄子)

青い瞳の人食いウルフ―魔界屋リリー (フォア文庫)

青い瞳の人食いウルフ―魔界屋リリー (フォア文庫)

 「魔界屋リリー」の第二巻です。今回魔界屋にやってきたのはジョー・ウルフという生意気な狼男の少年でした。彼は人間の世界と魔界をつなぐ魔界ロードを通ってきました。何者かが魔界ロードを破壊したらしく、ジョー・ウルフの他にも魔界人がぞろぞろわいて出ることになってしまいました。魔界能力のあるリリーを食べると魔界人の力が上がるらしく、リリーはジョー・ウルフの仲間のウルフ族につけねらわれることになります。リリー、三蔵法師扱いですか。魔界屋の仕事を押しつけられた上にさらに不幸になってしまいました。ご愁傷様です。
 やはりこのシリーズのテーマは落ちこぼれの子供にスポットを当てることのようです。リリーもマリーも、ゲストキャラのジョー・ウルフも敵役の神崎ランも、それぞれの世界で落ちこぼれて周囲からバカにされています。しかし、落ちこぼれであるからこそ抑圧してくる大人の価値観を相対化する力を得ることもできます。リリーは決して好きこのんでまがったことをするような子ではありませんが、勉強ができなくて忘れ物が多いため学校では落ちこぼれ扱いされてしまいます。彼女は実の親から「もういいわ、あきらめてるから。あんたは、おかあさん似だから、しかたないのよね。おとうさん似だったら、頭よかったのに」なんていう無神経な言葉を投げかけられます。子供をこんな理不尽な目にあわせる学校ってなんなんだろうと考えさせられてしまいます。