「デビルズドリーム」(長谷川集平)

デビルズドリーム

デビルズドリーム

現実だけじゃ息苦しいからさ、とアキは思う。どこかに息抜きが欲しいのよ。おとなだってそうじゃん。私、お父さんがお母さんに隠れてしていたこと、知ってるもん。

 両親が離婚して長崎に引っ越してきた少女が、ネット上の掲示板で友達と会話をしつつ、キリシタンや原爆など長崎のもろもろを見つめていくお話です。
 長谷川集平が長崎の子供による殺人事件に触発された作品を発表すると聞いたときには、正直不安になったものです。永遠の反逆児というイメージの長谷川集平がとうとう時流におもねる作品を書くほど年を取ってしまったのかと。しかし彼は作中で教員の口を借りて昔の人間の方が心が貧しかったと、俗流若者論とは正反対のことを言い切ってしまいました。やはり長谷川集平は長谷川集平でした。見事にとんがっています。
 作者のメッセージは読めばわかるのでさかしらに分析する必要はありません。ただ厳然と、長崎はそこにあります。