「リンドキストの箱舟」(アン・ハラム)

リンドキストの箱舟

リンドキストの箱舟

 気候の変化によって寒冷化し、野生動物が死滅してしまった近未来の地球が舞台。厳しい環境のためか社会は適正警察なるものが跋扈するような息苦しい管理社会になっていました。主人公の少女スローは科学者の母親にいらない知識を授けられたために収容所送りになり、運命が狂っていきます。
 いびつな社会で主人公がとことんひどい目にあう重苦しい展開がいい。正しいYAという感じがします。種子銀行から着想を得、リンドキストという異形を生み出したのもおもしろく、SFとしても評価できます。
 作者は世界幻想文学大賞アーサー・C・クラーク賞を受賞しており、大変高い評価を受けているようなのですが、邦訳作品は他にないようです。YAに限らず他の作品も読んでみたいですね。