「沈黙のはてに」(アラン・ストラットン)

沈黙のはてに

沈黙のはてに

 アフリカで暮らす少女チャンダが、生まれたばかりですぐに死んでしまった妹を弔うために一人で葬儀屋に商談に行くところから物語は始まります。
 アフリカ、HIV。このテーマでは今までさんざんつかまされてきたのでうんざりしていたところでしたが、この話は違いました。この手の作品は現状の悲惨さを訴えることに目が向きすぎて、物語たることがなおざりにされがちです。でもこの作品では人間が描かれているので、文学としてきちんと成立しています。
 口うるさい隣人や売春をしている親友と主人公の葛藤はきれい事だけで終わっておらず、HIVというテーマをぬきにしても共感を呼ぶYAになっていると思います。
 そしてなにより、困難な問題に直面しながら現実に即した希望をうたいあげていることに好感が持てます。