「いきている首」(アレクサンドル・ベリヤーエフ)

いきている首 [冒険ファンタジー名作選(第1期)]

いきている首 [冒険ファンタジー名作選(第1期)]

 ソ連SFの古典「ドウエル教授の首」のダイジェスト版です。「冒険ファンタジー名作選」の第4巻として2003年に出ました。
 大学を出たばかりの女医ローランはケルン教授の実験室に雇われ、世にも恐ろしいものを目撃します。それはケルンの師であるドウエル教授の首。ガラステーブルの上に載せられた教授の生首は胴体がないにもかかわらず生きていたのです。ローランは首の世話をいいつかりますが、やがてケルンのさらに恐ろしいたくらみを知ってしまいます。
 首だけで生存している人間という魅力的なアイディアとサスペンス性にとんだ展開に支えられ、一気に読める娯楽作品になっています。SFの入門として読んでおいて損のない作品です。
 しかし「ドウエル教授の首」のイラストがナビ・ルナの人になっていることに時代の流れを感じます。1967年に岩崎書店の「SFこども図書館」の18巻として出た時(当時のタイトルは「合成人間ビルケ」)のイラストは井上洋介でした。怖さという点では井上洋介が圧倒的。比べるのもばかばかしいくらいです。琴月綾バージョンは、新人女医のローランも30近い踊り子のビルケもロリキャラ化しているところが……いいんだか悪いんだか。今の子供がこういう絵の方が手に取りやすいというのなら、外野が口を出すべきことではないのですが。