「オーディンとのろわれた語り部」(スーザン・プライス)

オーディンとのろわれた語り部

オーディンとのろわれた語り部

 北欧神話世界が舞台。魔法使いのクヴェルドルフは北のさいはての国テューレの女王が結婚相手を探しているという情報を得、女王に取り入るためにアイスランド一の語り部ネコのトードに自分の物語を語らせようとします。しかしネコのトードが拒絶したために、魔法使いはトードの農場ににばけものをつかわしてトードを脅します。ばけものをおそれて兄弟や農場の人々は逃げだし、トードと客人の老婆のみが残されます。
 邪悪な魔法使いに信仰を頼りに立ち向かうという単純なストーリーで、分量も100ページちょっとしかありません。しかし、たくさんの人間の霊魂で作られたばけもの不気味さ、非力な語り部が信仰心と語りの技術のみを武器に戦う勇気が丁寧に描かれていて、物語の楽しみが凝縮された作品になっています。