「ぼくが地球をすくうのだ」(石井キヨシ)

ぼくが地球をすくうのだ (いわさき創作童話)

ぼくが地球をすくうのだ (いわさき創作童話)

 第22回福島正実記念SF童話賞大賞受賞作。壊れたマンホール型のUFOを見つけたヒロタは、宇宙人からUFOのかけらを探すように頼まれます。そのUFOは時間エネルギーで動いているので、早急にかけらを集めないと時間エネルギーが流れ出し地球が大変なことになるのだと言います。
 時間エネルギーをも持ったかけらにさわるとちょっとだけ未来のことがわかるというアイディアはいいのですが、それだけ。宇宙人は「地球にはたくさんの時間がある、アリの時間、ネズミの時間、人間の時間、ゾウの時間……」と思わせぶりなことを言いますが、それが全然生きてこない。時間エネルギーというせっかくの設定が空振りに終わっています。これではSFを名乗れるだけの水準に達しているとはいえません。最初から元ネタの「ゾウの時間とネズミの時間(本川達雄)」を読ませた方が小学生もおもしろがるはずです。福島正実賞はこんなレベルで本当にいいのか?
 SFだと思わなければまあまあおもしろいです。電波妄想を抱いた主人公を周りの友達があたたかく支えるさまがギャグも織り交ぜて感動的に描かれていて、低学年の児童も楽しめる作品になっていると思います。