「レオンとポテトチップ選手権」(アレン・カーズワイル)

レオンとポテトチップ選手権上 (sogen bookland)

レオンとポテトチップ選手権上 (sogen bookland)

レオンとポテトチップ選手権下 (sogen bookland)

レオンとポテトチップ選手権下 (sogen bookland)

 カーズワイルの「レオン」シリーズ第二作。5年生になったレオンのクラスに奇矯な理科教師スパークス先生がやってきます。彼は一年間の理科の授業のテーマを「ポテトチップ」にすることを宣言します。一方レオンたちはクラス一の乱暴者ランプキンにツバの魔法をかけようとしますが、前のようにうまくいきませんでした。レオンたちはポテトチップの授業も参考にしつつ、魔法がうまくいくように試行錯誤します。そしてランプキンをはめるためにに必要なある景品を手に入れるために、ポテチオタクのチャンピオンを決定する競技に挑戦することになります。
 主人公のレオンは小学生ながらいっぱしのコレクターです。前作ではタクシー運転手の出身国という風変わりなコレクションをしていましたが、かれのポテチに対するいれこみようも尋常ではありません。彼は世界中のありとあらゆるポテチの袋を蒐集しています。レオン・ザイゼル・ポテトチップ・コレクションなるものをでっちあげてメーカーに試供品を要求するという詐欺まがいのことまでやってのけます。まったく手におえない小学生です。
 作品のテーマは探求心です。おかしな授業をしていると保護者たちに詰め寄られたスパークス先生はこう説明しました。

「五年生はただポテトチップについて学んでいるだけではないんですよ。子どもたちはポテトチップから学んでいるんです。そしてつけ加えさせていただければ、ぼくもまた学んでいます」

 教育者としては完璧な答弁、素晴らしい言い逃れです。しかし探求心も度をこすと道を踏み外してしまいます。そしてレオンやスパークス先生は明らかに度をこしているため、見事なギャグが展開されています。スパークス先生の授業は毎回オタクの祭典になっています。腕に覚えのあるオタクが腕を競うあう「チップ・オフ」の熱狂っぷりにはさらに圧倒されてしまいます。
 終盤スパークス先生は保護者たちのつるし上げを食って学校を追放されそうになります。そこで子供たちが彼を守るために立ち上がるという学園ドラマでおなじみの展開になります。しかしこの作品ですからその方法はストレートなものではありません。彼らはポテトチップがいかに学習の役に立つか証明しようとします。そこでポテチを使った文章題を作ってみたり、ポテチをネタに俳句をひねってみたりします。極めつけはポテチを使って宇宙像を説明する理論です。まさかこんなところでロバチェフスキー幾何学なんて言葉を聞くとは思いませんでした。
 底知れない知識量を無駄遣いしておばかすれすれのエンターテインメントを見せてくれるところがカーズワイルの魅力です。完結編になる次作も楽しみです。