「聖魔女たち」(北原樹)

聖魔女たち (偕成社コレクション)

聖魔女たち (偕成社コレクション)

 思春期の少女の過剰なエネルギーが超能力となって発現される様をユーモラスに描いた、一風変わった思春期小説です。
 なにしろ舞台となる学園の名前が「聖カテリナ学園」で、Lクラブというソロリティが学園を牛耳っているというのだからふるっています。文庫本の少女小説ならこういう設定は珍しくないかもしれませんが、この作品の初出は「飛ぶ教室」、偕成社から出版されています。
 第一話「聖ジョージアと竜」はソロリティメンバーのお姫様がドラゴンのような他校の不良にさらわれてしまい、騎士に変身する超能力を持った少女がいやいや救出をまかされるというお話。あまりにおばかなお姫様は放置されてしまい、ドラゴンと騎士のあいだに友情が生まれるという罪のない落ちがつきます。
 第二話では消したいものを消してしまえる超能力、第三話では好きな男の子をネタにした妄想が現実になる超能力、第四話には他人を意のままに操れる超能力が登場します。第二話以外はギャグが効いていていいコメディになっていました。特に第四話、当人は親切のつもりで超能力を使っているのにことごとく裏目に出る少女の物語は傑作。当人が最後まで自分のしていることがはた迷惑でしかないことに気づかないのがいいです。
 思春期ならではの悩みを丁寧にすくい上げていますが、それを深刻にせずにギャグにしてしまう手法により、逆に当事者は救われるのかもしれません。