「アマチェム星のセーメ」(ロベルト・ピウミーニ)

アマチェム星のセーメ―イタリアからのおくりもの 5つのちいさなファンタジア

アマチェム星のセーメ―イタリアからのおくりもの 5つのちいさなファンタジア

 アマチェム星に住むセーメという名の宇宙人が主人公です。アマチェム星の住人には地球の人間と大きく違う点が二つあります。ひとつは髪の毛がなく頭の上に赤い雲をのせていること。この雲は彼らの心なのだそうです。もうひとつは生殖の方法。アマチェム星の人間は想像力による単性生殖で発生します。アマチェム人は寂しくなると自分の欲しい仲間を想像し生み出すことができるのです。
 セーメの雲は他の並みはずれて大きく育ちました。セーメの親のアマチェムは心配して、エフレテルという老人にアドバイスを求めます。エフレテルはセーメに宇宙を旅したくさんの世界を見るように提案しました。
 セーメはたくさんの星々をめぐることになります。ここでピウミーニの途方もないイマジネーションの世界が披露されます。しゃぼん玉の月を持つ、石鹸でできた惑星。三百万人の医者と二千五百万人の看護師を抱えながら患者だけがいない、宇宙空間に浮かぶ巨大な病院。文字通り星になってしまった人々。そしてセーメとそっくり同じ姿をした星。さまざまな趣向でめまいがするような異世界旅行を楽しませてくれます。
 オクタヴィア・モナコの挿絵もすごい。彼が描くセーメの雲は、雲というより生々しい臓器にみえます。それがどんどん肥大していくのが不気味です。
 読んでおいて損はありません。本年の翻訳作品の中でベスト5には入るでしょう。