「うちゅういちのタコさんた」(北川チハル)

うちゅういちのタコさんた

うちゅういちのタコさんた

 たまこのお父ちゃんはたこ焼き屋さん、お母さんはトラックの運転手です。お父ちゃんは宇宙一のたこ焼き屋を目指していますが、たまこはお父ちゃんの顔がタコみたいになるのが心配。関西弁で漫才をしながら一家は仲よく暮らしていました。ところがそこへ「なんでうちにはサンタがきてくれへんの?」問題が発生します。子供の物欲を無責任に煽ってまったくクリスマスは罪作りなイベントです。
 お父ちゃんはたこ焼きでツリーをつくりますが、たまこはそれで納得せず泣き出してしまいます。困ったお父ちゃんは店を休んでたまこをおもちゃ屋に連れて行きます。ところが実際店に行ってみるとどのツリーにもおもちゃにもたまこの食指は動きませんでした。結局気分が悪くなって家に帰り、たこ焼きツリーを食べることになりました。
 画一的な幸福を人々に押しつけるクリスマスはまったく罪作りなイベントです。幸福のあり方は多様です。サンタにプレゼントをもらえなかった自分の子供時代の写真を見せながらお父ちゃんがたまこに語った言葉は本質をついています。

「まぁ、とにかく、おとうちゃんも、むかしは こどもやったと いうこっちゃ。サンタクロースの プレゼントは 、いちども もらってへんけどな、おとうちゃんは、しあわせや。ゆめある おとなに なれたやろ?たまこも しんぱいせんでええ」(50ページ)
「サンタクロースが なんぼのもんじゃ。 ほかにも、ゆめは あるやろう?」(51ページ)