「天下無敵のお嬢さま② けやき御殿のふしぎな客人」(濱野京子)

 ふたたびこうの史代に釣られました。中国武術をたしなむ活発なお嬢さまながら、慇懃無礼であることと美少年好きであることのふたつの致命的な欠点を持った小学6年生沢崎菜奈を主人公とするシリーズの第二弾です。
 今回も菜奈の困った癖が発動してしまいます。ふしぎな気配を感じた菜奈が木にけりを入れたところ、木の上から好みの美少年が降ってきました。美少年の名は葉加瀬小五郎。「地球防衛軍」っぽい奇抜なファンションをした彼は何か重大な目的があって花月町にやってきた模様で、彼をかくまった菜奈達も事件に巻き込まれることになります。
 さて、今回はお話がSFになりました。シリーズがどういう方向に進もうとしているのか予想がつきません。気になるのは、語られる事件が菜奈たちの日常と乖離していることです。今回のSF展開で見られた未来に関する話は全く正しいことをいってはいるのですが、菜奈の日常からその話にいく必然性がありません。これはシリーズの一巻でも感じたことで、この物語に超常現象を介在させる必然性が説明されておらず、どうも唐突な印象を受けてしまいます。
 菜奈の逸脱にしてもそうです。今回菜奈が日常を捨てる選択に至った理由はわからなくもありません。菜奈が相当な無理をして「天下無敵のお嬢さま」を演じているであろうことは察することはできます。しかしそこまでの選択をするに足る理由として語られているかというと、ちょっと必然性が薄いです。
 ただあくまでこれはシリーズ途中での感想です。今後物語が壮大な花月町サーガに発展し、子供達の日常と大きな物語の連結が説明されるのであれば、面白いシリーズになるはずです。何をやるかわからない大きな可能性を持ったシリーズですので、どんな方向に行くのか注目したいです。