「仮面の国のユリコ」(浜たかや)

仮面の国のユリコ (偕成社ワンダーランド)

仮面の国のユリコ (偕成社ワンダーランド)

 ユリコはおばあちゃんの家の屋根裏部屋からシャイトの国という異世界に迷い込んでしまいます。シャイトの国の人々は成人すると必ず仮面をかぶって生きることになっていました。ところが王女ユラフラが仮面をかぶることを拒絶したため、彼女は呪われて覚めない眠りについてしまいました。ユリコはユラフラの呪いを解くために、「くるった庭園」の中にある「奥の塔」を目指して旅をすることになります。
 「仮面」というテーマはありきたりですが、ありきたりだからこそ難しいテーマを無難に処理している作品です。
 物語の中盤で「くるった庭園」は王女の夢の中の世界であるという説が提示されます。となると「アリス」が思い出されますが、この作品もまさに「くるった庭園」というワンダーランドを描いているところが面白いです。なにしろ目指す塔はすぐ目の前にみえるのに、様々な不条理な試練がユリコたちを襲うことになります。一行の影が動物の形になって暴れ回ったり、生きている湖が人間を食べようとしたり……。いい具合にくるった世界が繰り広げられています。
 また、ワンダーランドには饒舌なキャラクターが欠かせませんが、この作品にもいいキャラクターが登場します。唯一元の世界からついてきたライオンの顔の形のノッカー。彼がなかなかの皮肉屋で意味ありげなセリフをたくさん吐き、物語を引き締めてくれています。