「衣世梨の魔法帳④ 魔法犬花丸のひみつ」(那須正幹)

衣世梨の魔法帳〈4〉魔法犬花丸のひみつ (衣世梨の魔法帳 (4))

衣世梨の魔法帳〈4〉魔法犬花丸のひみつ (衣世梨の魔法帳 (4))

 衣世梨の魔法帳第4弾。季節は梅雨、衣世梨は犬の花丸が夜な夜な外に出かけていくことに悩まされていました。不思議なことに鎖でつないでもいなくなってしまうのです。オカルト好きのさやかさんに相談すると、衣世梨の家に泊まり込んで監視しようと言い出しました。すると花丸はしまったままのドアをかまわず通り抜けて外に飛び出していきました。ふたりが追跡していくと、どうやら花丸は山の中のお宮に行っていたようだということがわかりました。ところがここで別の問題が発生します。衣世梨がさやかさんだけを家に泊めて調査をしたので、他の友達との間に亀裂が入ってしまったのです。さて、衣世梨はこの二つの問題をどう解決するのか。
 あいかわらず我が道を行くさやかさんが輝いています。自分の興味のあること以外は全くお構いなし。ひとりで衣世梨の家に泊まったことを何の配慮もなくワッコと愛ちゃんにバラしてしまいます。この子のマイペースさは本当にすがすがしいです。不思議事件のほうは前回の地球空洞説の後なのでちょっとパワー不足でしたが、今回は友達ともごたごたのほうで楽しませてもらいました。
 改めて思ったのは、この作品はズッコケ三人組でなく女の子を主人公とした物語であるということです。ハチベエたちなら友情に亀裂が入ったとしてもそれがテーマの中心になることはまずありませんでした(マコがからまなければ)。こういうのができるなら、今度は女の子視点からみたズッコケ三人組の物語もみてみたいです。花山第二小学校六年一組で、荒井陽子を頂点とした権力ゲームに「占い専科」に活躍したような濃い面々がどう絡むのか。中年はもういいですから、ズッコケの番外編をやるならこんな企画はどうでしょうか。