「シェーラひめのぼうけん 最後の戦い」(村山早紀)

 「シェーラひめのぼうけん」の第十巻、第一部の最終回です。実に美しい最終回でした。
 ますは迫力満点の空中戦で楽しませてくれます。地上は魔物たちで埋め尽くされており、じゅうたんや木馬から落ちれば確実に殺されてしまう状況です。そして来るべきピンチでとうとうハッサンがミリアムに真実を告げます。シリーズ一番の泣かせどころです。10巻まで待ったかいがありました。
 最後の戦いに今までの旅で出会った人々が駆けつける。ミリアムは燃え、サウードはこんな状況でもしっかりぼけをかまし、アリまでもが戦闘要員として活躍する。この本には読者をあっといわせるような意外な展開はほとんどありません。奇をてらわずにやるべきことをきちんとこなし、これ以外には考えられないほど完璧な物語を紡いでくれました。だからこそこの作品は美しいのです。
 何よりすごいのは、やるべきことすべてを詰め込んだのに本の厚さをいつもどおりで収めていることです。これを職人技と呼ばずしてなにを職人技と呼べばいいのか。何度も繰り返しますが、最高に美しい最終回でした。