「カードゲームクロニクル」三部作(石崎洋司)

 カードゲームシリーズの後半三部作。イラストが緒方剛志にかわり、よりラノベ色が強くなっています。

 前作「カードゲームの鉄人」のどさくさでチームを組むことになったデュエリストの哲也、ミレイ、陽介、一馬。今回彼らはハイキングゲーム「フェンスイ・アドベンチャー・ゲーム」に挑戦します。ゲームに勝つとレアカードを手に入れられるはずだったのに、「フェンスイ・アドベンチャー・ゲーム」は実は負けるとカードにされてしまうという恐ろしいゲームでした。照子という怪しげな助っ人も加わりますが、果たして彼らは無事ゲームをクリアできるのか?
 「フェンスイ・アドベンチャー・ゲーム」は、「うそつきのクレタ人」などの論理クイズがメインになっています。最後のカードゲームがしょぼいのが残念ですが、これはこれで楽しめると思います。
 ラストで示された「正反対のものがあって初めて『気』は流れを持ち、世界に生命があふれる」という陰陽道の「太極」の思想が、今後明かされるであろうデュエリストの正体に関わっていくのかが気になるところです。
 それにしても、イラストが変わったせいもあるのでしょうが、キャラクターの印象が変わりすぎです。特に一馬。「カードゲームの罠」で見せたあの悪逆非道ぶりはどこへ行ったのか?普段のジャイアンと映画版のジャイアンくらい違います。あの一馬を「乱暴者だけど実は気のいいガキ大将タイプ」にするのはさすがに無理があると思うのですが。 哲也が失踪し、ミレイは体験入学した中学校で監禁されてしまいます。周りの人間がみんな「力」に操られて敵になってしうなか、ミレイは同じく「力」を持つ少年秀一に助けられ、学校のどこかにいるはずの哲也を捜索することになります。
 さすがにこれはだめでしょう。第一に「カードゲームシリーズ」を名乗っているのに全くカードゲームをしないというのは読者に対する裏切りではなかろうか。そのかわりに暗号パズルが挿入されていますが、これが不気味な敵に包囲されているというホラー的状況との相性が最悪です。暗号を解くたびにいちいち立ち止まっていては、せっかくの緊張感がとぎれてしまいます。
 第一巻からいくらでも大風呂敷を広げられそうな設定を提示していたのに、この巻が終わってみれば物語は哲也が自らの呪われた血筋と対決するという古色蒼然としたテーマに収斂されそうになってしまいました。この様子だと、シリーズ化しなければよかったのにという結果になってしまいそうです。 「あやつり人形の教室」の読了後に懸念していたとおりの展開になってしまいました。哲也が最初はいやいや「力」を使うけど、やがて「力」におぼれていき、最後には反省するという予想のつく範囲の展開でした。
 「力」という設定は魅力的だったのに、最後まで生かしきれませんでした。最大の敗因は「力」の出所を単なる遺伝にしてしまったことでしょう。そのためよくある因縁物語として収まりをつけるしかなくなってしまいました。
 どうやら「罠」と「呪い」が面白かったので期待しすぎてしまったようです。