「大きなウサギを送るには」(ブルクハルト・シュピネン)

大きなウサギを送るには

大きなウサギを送るには

 ドイツの少年コンラートは、男の子みたいにフリッツと名乗っている少女と知り合います。フリッツの父親はクリスティーネという女にひっかかってフリッツの母親と離婚してしまい、母親は鬱状態になり薬に頼るようになってしまいました。フリッツは自分の生活をぶちこわしにしたクリスティーネに手ひどい仕返しをしようとたくらんでいました。彼女はコンラートと会話しているうちに、動物アレルギーのクリスティーネの家に父親が飼っていた巨大ウサギを送りつけて発作を起こさせるというナイスアイディアを思いつきます。コンラートは気乗りしないままフリッツの悪事の片棒をかつがされることになります。
 このフリッツという少女が涼宮ハルヒを5歳ばかり若くしたようなハイテンションで手に負えない子で、くるくる表情がかわり時折邪悪な笑みを見せるのがかわいらしいです。彼女の気まぐれに振り回されていらぬ苦労をしてしまうコンラートもかわいそうで笑えます。
 しかしながら離婚で背負わされてしまった彼女の悲しみは本物です。どんな大人の事情があるにせよ、離婚という事態において子供は一方的に被害者の立場に立たされてしまいます。でも、人の心は善悪で動かすことはできず、一度壊れた関係を修復することはできません。子供にしてみれば理不尽きわまりない話です。だからこそ、フリッツがしたようにとりあえず責任者に怒りをぶつけるという作業は重要なのだと思います。たとえそんなことをしたって何も解決しないとしても。