「みどパン協走曲」(黒田六彦)

みどパン協走曲

みどパン協走曲

 第8回ちゅうでん児童文学賞大賞受賞作。
 主人公は貧乏寺の息子で小学5年生の瞬平太。彼の寺で事故で視力を失いふさぎ込んでいる少年拓斗を預かることになりました。父親の住職は以前サッカーで活躍していた拓斗にロードレース大会に出ることをすすめ、瞬平太は彼の伴走役をすることになります。はたしてふたりは大会までに息のあったコンビになれるのか。
 要約すれば男二人が殴り合って友情を成立させる物語ということになりますが、その過程が200ページ近くかけて丁寧に描かれているので読み応えはあります。
 欠点は安易に登場人物の口を借りて作者のメッセージを垂れ流してしまっている点です。いいたいことをそのままセリフとして語るのではなく、物語の中でうまく処理してくれないと読者の興がそがれてしまいます。文章は安定しており芯にしっかりしたものが感じられるので、この欠点さえ克服できればすぐにあっと驚くような傑作が生まれそうな予感がします。第二作が楽しみです。