「氷原の守り人」(澤見彰)

氷原の守り人

氷原の守り人

 1899年、ゴールドラッシュの時代、日本人青年大堀一樹も一攫千金を夢見てアラスカ行きの船「引き返せ号」に乗り込みました。ところが「引き返せ号」の乗客は金鉱の主ザックス氏にだまされて、金鉱で苛酷な労働を強いられる運命にありました。そのからくりに気付いた大堀一樹は荒れ狂う海に放り出されてしまうことになります。
 戦前の少年小説だといわれても違和感のないくらい古めかしい本でした。序盤は主人公がひどい目にあい、ためにためて終盤で一気に物語が動くわかりやすい展開です。ポイントポイントはそれなりに押さえ、そうなるしかないだろういという方向に落ち着くので、面白くないわけではありません。ただし、主人公がボンクラでなんの役にもたたないのでいまいち盛り上がりに欠けます。そのわりには最終的に「白人たちに迫害される先住民を救いたい」なんて思い上がった勘違いをしてアラスカに残ったりするし。扱いに困る主人公です。