- 作者: 山田正紀
- 出版社/メーカー: 理論社
- 発売日: 2007/03/01
- メディア: 単行本
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主人公の少女たちのキャラクターがなかなか特異です。彼女らはそろいもそろってみんな偏屈もので普通の女の子が好きそうなことには全く興味がありません。幼稚園時代からのつきあいがあるはずなのですが、いまでは「たまに学校で顔をあわせたりすると、あいまいにうなずきあう程度」の距離に落ち着いていました。
彼女たちはそれぞれ明確な将来の夢を持っています。しかし、彼女たちの前途は決して明るいものではありません。やがて彼女らが家庭環境や閉鎖的な田舎町の空気によって大きな抑圧を受けていることが明らかになり、夢は彼女たちにとって細い細い心の支えであったことがわかります。一見エキセントリックに見える少女たちですが、そのキャラクターによって思春期独特の鬱屈感が強烈に印象づけられるので、同世代の共感も得やすいと思います。
あとがきによるとこの作品はミステリーとファンタジーの融合を目指しているそうです。一応事件に合理的な解決は与えられるのですが、最後の最後で物語は巧みにファンタジーにずらされ、少女時代の終焉をリリカルに演出しています。一方でミステリのお約束である「名探偵」にちょっかいをかけるなどの遊びも仕掛けられており、多様な楽しみ方ができる一冊に仕上がっています。