「のんびりこぶたとせかせかうさぎ」(小沢正)

 のんびり屋のこぶたと、見栄っ張りのうさぎ、性格が合わないのになぜか同居しているふたりでしたが、うさぎはこぶたが食べ物の夢ばかり見ていることが気にくわなくてお説教をします。最近タヌキが動物として初めて市議会議員になった、彼はこぶたのように食い意地の張った夢なんか見ないで、音楽会やダンスパーティなどの高級な夢を見ていたに違いない、君も見習って音楽会やダンスパーティの夢を見たまえと。そしてどこからか他人の夢を一緒に見る機械を持ってきて、こぶたが高級な夢を見るように監視を始めました。首尾よくダンスパーティに招待される夢が見られましたが、会場に着いてみると客はみんなこぶたの大好きなキャベツ。うさぎはこぶたを心底軽蔑し、今度はこぶたにうさぎの夢を見せることになります。
 友達と一緒の夢を見られるという設定だけで半分勝ったようなものです。枕に洗濯ばさみをつけるという機械の単純な構造も楽しいです。
 うさぎの夢で実はうさぎも俗物だったことがばれるわけですが、そういう人間の卑小さをすべて包み込むこぶたの友情がほほえましく、非常に気持ちいい読後感を味わえます。小沢正にしては毒の少ないさわやかな童話です。