「ラブ偏差値3 年上のアイツ」(斉藤栄美)

ラブ偏差値 年上のアイツ (フォア文庫)

ラブ偏差値 年上のアイツ (フォア文庫)

 「ラブ偏差値」第3巻。今回は前2作の主人公れんげが脇役にまわり、実学舎の友達万稚が主役をはりました。彼女は3歳の時から9年間もみっつ年上の伊織君に片思いをしていました。ある日万稚は伊織君が中学生女子に怒鳴られている現場を目撃します。彼女は伊織君と同じ美術部に所属している上村恭子で、伊織君と友達の恋の橋渡しをしようと画策していました。万稚の気持ちを知らない上村恭子は、万稚にキューピッド役の協力を依頼します。もちろん万稚はそんな役はまっぴらごめんでしたが、れんげが「敵側に潜入して、内部からぶちこわ」せとすばらしいアドバイスをくれたので、しばらく上村恭子につきあうことにしました。
 今回はコメディ色が強かったです。天然ボケの上村恭子に振り回される常識人の万稚がかわいそうで笑えました。
 れんげが意外な策士ぶりを発揮してくれたことも気になります。なるほど、ラブ偏差値が上がると女子は黒くなるのか。そういうことならラブ偏差値の趣旨も理解しやすくなります。おそらくれんげは最後には幼なじみとくっつくことになるのでしょうが、それまでもっといろいろやらかしてもらいたいものです。
 しかし万稚は万稚で「平均点も、偏差値も、知らなくていい。 ウチの恋は、ウチだけのものだから―― 人との比較は必要ないんだ。」とラブ偏差値を全否定してしまいます。今後作品の中でラブ偏差値という小道具にどういう意味づけが与えられていくのでしょうか。