- 作者: ジョゼフディレイニー,佐竹美保,Joseph Delaney,金原瑞人,田中亜希子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/03/22
- メディア: 単行本
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そういうわけで魔使いは実は無力なので、爽快な戦闘シーンなどはなく、恐ろしい魔物に追いつめられていくホラーチックな物語になります。トムは魔使いの戒めを破り、「とんがった靴をはいた女の子」に関わってしまったことから、封印された魔女の復活に手を貸してしまうことになります。ピンチのときは具合よく師の魔使いが出かけていて、トムは孤独な戦いを強いられます。基本的な物語のつくりはオーソドックスで、安定した読み応えが保証されています。
この物語はホラーとしてだけでなく恋愛小説としても読めるでしょう。相手役は「とんがった靴をはいた女の子」アリスです。彼女はトムを何度もだましてひどい目にあわせた、本心の見えにくいキャラクターです。少年からみたの少女の「わからなさ」を体現しているところが彼女の魅力です。
しかし本作で最も強烈な存在感を放っているのはトムの母親です。彼女は知恵も力も魔使いと同等かそれ以上に持っているようで、トムは誰よりも母親を崇拝しています。トムは魔使いより母親を頼りにしていますから、本作の徒弟物語としての側面は破壊されかねません。アリスとの恋愛小説としてみても、トムの極端なマザコンぶりは障害になりそうです。この人がこの先どのように物語に絡むのか気になります。まあ、12歳というトムの年齢を考えれば、この程度のマザコンは異常というほどではありませんけど。
シリーズは本国では三巻まで刊行されています。先の楽しみなシリーズになりそうです。
ただし、「魔使い」という訳語が適切であったかについては疑問が残ります。意味不明な上にゴロが悪いです。