「中学時代 男女共学第一期生」(奥田継夫)

 1973年講談社より刊行。新制中学第一期生を主人公とした奥田継夫の「学園三部作」の第2部です。
 新時代の民主主義の実践として、とりあえず不適格教員を生徒の手で追い出そうというあまり穏やかでない物語です。
 作品は2Dの生徒有志が書き継いでいった学級日誌という体裁を取っています。複数の生徒の視点から2Dの担任陸奥赤人の清濁併せのむ人間像があぶり出されていきます。陸奥赤人は「和と団結」をクラスのスローガンとしてかかげ生徒の心をつかみますが、すぐにぼろを出していきます。得意技はえこひいきで、学級新聞の検閲など新時代にふさわしくない行状にも及ぶ、とどめは女生徒にセクハラをすると、教員としては救いようのない人間でした。生徒たちは陸奥赤人に対して憧れと憎しみと相反した思いを抱えつつ、次第に不正は許せないという方向にまとまっていきます。
 陸奥赤人だけでなく、生徒たちも矛盾を抱えた人間として描かれています。学級日誌は4人の生徒によって執筆されていますが、おそらく誰が読んでもこの中に気にくわない人間が出てくるような描き方がなされているのだと思います。わたしは最初の執筆者の半田清の偽善者ぶりに辟易させられました。また、セクハラの被害を受けながら一面ではそれを喜んでいるそぶりを見せる前田文枝の描き方も気持ち悪く感じてしまいました。子供をイノセントな存在として描かず、読者が嫌悪感を持つまでに複雑な人間として造型しているのがこの作品の美点です。