「ノンビリすいぞくかん」(長新太)

ノンビリすいぞくかん (理論社のようねんどうわ)

ノンビリすいぞくかん (理論社のようねんどうわ)

ノンビリすいぞくかん (フォア文庫)

ノンビリすいぞくかん (フォア文庫)

 水族館をとびだした生き物が人間の世界でもまれるお話。別に室生犀星の金魚*1のように人間に変身するわけでもなく、当たり前のように魚が空を飛んでいくのが長新太ワールドです。ヒラメは野球を見にいってファンに座布団にされ、飛行場に遊びに行ったイカは自らが飛行機に変容し、人間を乗せて飛び立ってしまい、市街に現れたタカアシガニは歩道橋と間違われ人間に踏みつけられ憤慨して帰ってしまいます。
 フォア文庫版には「ノンビリすいぞくかん」の他に「飛ぶ教室」に掲載された短編が3作収録されています。その中の「ン」という作品は、人間にバカにされたかわいそうなライオンのお話です。童話の中で損な役回りばかりさせられるライオンは、自信を失いついでに名前も三文字失って「ン」になってしまいました。

ライオンをバカにしたえほんのえかきや、どうわをかくにんげんがわるい。みんなしけいにせよ!

 ラストには人間の医者のコメントがあり、このライオンは鬱病だという落ちがついています。長新太にはめずらしいダウナー系の怪作でした。