「あさきゆめみし3」(大和和紀/原作 時海結以/文)

 時海結以による「あさきゆめみし」ノヴェライズの第3巻。朝廷への反逆ともとれる藤壺、朧月夜との不義密通、数え切れない婦女暴行と悪行の限りを尽くしてきた光源氏は、とうとう須磨に流されはじめて報いを受けることになります。ちょうどこのあたりが、源氏物語に手を出したら最低ここまでは読んどけという節目になるでしょう。
 それにしても冒頭で光源氏にあんなひどいことをされた紫の上がすぐに気が変わってしまうのは、今の感覚では違和感を持ってしまいます。ここは著者の力量の問題ではなく、もともと序盤の紫の上は統一した内面を持った存在として描かれていないので仕方がありません。しかしこの青い鳥文庫版でのエピソードの取捨選択を見ると、少なくとも光源氏は一貫性のあるキャラクターとして描こうとしているように思われます。