「さばくの町のXたんてい」(別役実)

さばくの町のXたんてい (講談社の幼年創作童話 10)

さばくの町のXたんてい (講談社の幼年創作童話 10)

 Xたんていは砂漠に囲まれた静かな町に事務所を構えていました。そこへやってきた依頼人がピンクのぞう。象は体が徐々に消えていく奇病にかかっていて、探偵に原因の調査を依頼します。象の飼育係に事情を聞いた探偵はおもむろにつぶやきました。「これはね、みっしつじけんだよ。」
 ピンクの象と言えば典型的な幻覚ですが、象の正体が本当に幻覚だったというのには驚かされました。さびしい人々の夢想が生み出した象が静かに消えていく哀愁の漂ったラストシーンが秀逸です。