「谷間の底から」(柴田道子)

谷間の底から (昭和34年)

谷間の底から (昭和34年)

 1959年刊。学童疎開を経験した世代が成長してはじめて疎開をテーマに書いた作品だそうです。
 修善寺疎開した5年生の千世子は6年生の克枝のいじめに耐えつつもりっぱな皇国少女になろうとがんばります。やがて戦局は悪化し、疎開先は富山平野に移り生活状況はさらに悪化します。
 家族間で詩のやりとりをするようなちょっとしたお嬢が苛酷な生存競争の場に放り出される展開が面白いです。が、なにぶん古い作品なので成長小説として穏当で、古典的な少女小説の域を抜け出してはいません。人間魚雷で特攻するお兄さま萌えな感じで楽しむのも一興かと。