「新シェーラひめのぼうけん2 旅だちの歌」(村山早紀)

 2巻ではハイルとミリアムの子供が登場します。祖父から名前をもらったハッサン王子は音楽の才能を持ったほがらかな少年。弟のジュドル王子は錬金術の天才で穏やかな性質の少年でした。
 第2巻は、ミリアムお手製の空飛ぶマントを羽織ったハイルが、歯を光らせて正義の味方として悪をなぎ倒す楽しいエピソードから始まります。が、その後それぞれの王子の悩みが明かされ、楽しいだけの話にはならないだろうという予感を持たされます。
 圧巻なのは予想外に早く襲来した異世界の魔物に旧シリーズのキャラクターが立ち向かう場面です。まだ2巻なのに最終回のようなテンションで迫力のある戦闘シーンが繰り広げられます。ページ数はわずか30ページほど。イラストもあるので文字数にしても数えるほどしかありません。にもかかわらず全てのキャラクターに見せ場を与え、思いを語らせている。この技術は神業としかいえません。特にファリードがもう。
 さて、これで子供たちの新しい旅は始まってしまいました。旧シリーズに負けない壮大な物語が期待できそうです。