「風景」(後藤竜二)

風景 (新・わくわく読み物コレクション)

風景 (新・わくわく読み物コレクション)

 敗戦からおよそ10年後、後藤竜二が育った北海道の「風景」が描かれた自伝的な作品です。
 冒頭は小学校のエピソードが語られます。後藤少年のクラスは「台風学級」呼ばれる荒れたクラスで、担任の先生は退職に追い込まれてしまいました。後藤竜二の読者なら既視感を感じることでしょう。この状況は「学級崩壊」なる言葉の発明以後の学校を描いた「12歳たちの伝説」と全然変わりません。今も昔も調子に乗って限度を越えてしまう子供がいるのは同じだし、心を病んでしまう教員がいるのも変わりません。
 農業を営む後藤少年の父親は、出稼ぎにやってきた若者の言動が理解できず、「世も末だ」とぼやきます。世代間が断絶しているこんな状況も今も昔も変わりません。時代や環境が変わっても子供の本質、人間の本質は変わらないということが後藤竜二には見えています。