- 作者: 大海赫
- 出版社/メーカー: ブッキング
- 発売日: 2007/07/25
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 10回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
10冊目の「ベンケーさんのおかしな発明」の内容は、乱暴に説明するとドラえもんです。いつもゴキゲン(ジャイアン役)にいじめられているボーズ(のび太役)を助けるため、ベンケーさん(ドラえもん役)が発明品をくれるお話です。ただし、大海赫ですから絵が無駄に怖く、強烈な印象を残します。
この話のドラえもんはややマッチョで、ジャイアンと決闘させようとジャンピングシューズを与えてのび太をびしばし鍛えるのがおもしろいです。対するのび太の逃げっぷりも度を越していて、冬眠するための発明をドラえもんにねだって断られると、自力で眠りこけて夢の世界に逃避します。ドラえもんはわざわざ他人の夢に入り込む機械を発明して、さんざん苦労してのび太を連れ戻します。
こうしてストーリーを追っていくと、作者はストレートな成長物語を指向しているようにみえます。それだけにあの結末には意表をつかれました。以下結末に触れます。
ラスト、ボーズとゴキゲンの決闘を止めたベンケーさんは、ゴキゲンが「もやもや」を抱えていることを発見します。ベンケーさんは自らの身を投げ出してゴキゲンの「もやもや」を解消しようとします。すると無数の子供や動物が現れて、みんなしてベンケーさんに飛びかかってきました。ベンケーさんは彼らの相手をしますが、やがてこらえきれなくなり、自分の姿のロボットを造って身代わりにしました。
みんなは、むねの中にもやもやがたまってくると、ベンケーさんのところにやってきて、おもいきりこのロボットをいじめましたとさ。(p127)
これでおしまい。「とさ」でしめられるとなんとなくきれいにまとまったような気になってしまいますが、全然そんなことはありません。
人間の暴力衝動をロボットで発散させようというネタは矢玉四郎も児童文学でやっています。でもこの作品の場合、ありふれた成長物語を装いつついきなりあんな結末をみせるので、わりきれなさが一層強調されます。他の大海赫作品と同様に、この本もたくさんの子供にトラウマを残したはずです。