「コウヤの伝説① 金色の竜」(時海結以)

コウヤの伝説〈1〉金色の竜 (フォア文庫)

コウヤの伝説〈1〉金色の竜 (フォア文庫)

 作者の時海結以富士見ミステリー文庫で単行本デビューした作家ですが、この作品にラノベ色はあまりありません。むしろこの作品からは、伝統的な日本の児童文学の泥臭さが感じられます。
 時代は鎌倉末期。神の野「コウヤ」に迷い込んでしまった三人の少年少女が、金色の竜に導かれて「コウヤ」から脱出するために冒険するお話です。
 三人組の一人きじゅ丸は、執権北条高時の息子ながら「戦をしない子」としてひそかに育てられた少年です。彼は不本意ながら北条家の跡継ぎの証である宝剣「鬼丸」を与えられます。
 三人組の紅一点のみさ可はさむらいの娘で、武芸の腕は確かで自分も立派なさむらいになりたいと思っていました。しかし女はさむらいになれないことを知ってしまい、失意の日々を過ごしていました。
 農民の息子の吾郎は貧しい生活に苦しみ、武勲を立てて出世することを夢見ていました。そこをバサラという覆面姿の怪しい男たちにつけいられてしまい、吾郎は彼らにそそのかされてみさ可の実家であるさむらいの屋敷に火を付けてしまいます。
 この本では三人の出会いまでが語られています。三人の子供たちはそれぞれ戦乱に巻き込まれ居場所を失ってしまい、第一巻から子供同士で殺し合うハードな展開を見せます。重厚な物語が期待できそうです。