「トリゴラス」(長谷川集平)

トリゴラス (みるみる絵本―ぽっぽライブラリ)

トリゴラス (みるみる絵本―ぽっぽライブラリ)

とぼけんといてか、おとうちゃん。
ぼくは ほんまのことが ききたい。
そらで びゅわんびゅわん ゆう、あの音のことや。
あれは、かいじゅうにちがいない。そうやろ、おとうちゃん。

 外でびゅわんびゅわん鳴り響く音をきいて、かいじゅうが暴れ回まわっているのではないかと妄想する少年の物語です。少年の妄想の中でかいじゅうは街を破壊しつくし、「かおるちゃん」を攫って去っていきます
 草森伸一は「少年の鬱屈した凶暴にして性的な想像力が描かれている」と解説しています。少年の表情はまさにそうしたただならぬ迫力を感じさせます。
 こんな少年を父親は「あほか、おまえは。あの音は ただの風の音じゃ。そんな しょうもないこと ごちゃごちゃゆわんと はよねえ!」と軽くいなします。なんとなくシューベルト「魔王」を思い出してしまいました。
初音ミクさんにシューベルトの魔王を歌ってもらいました