「コウヤの伝説④ ふぶきの山」(時海結以)

コウヤの伝説〈4〉ふぶきの山 (フォア文庫)

コウヤの伝説〈4〉ふぶきの山 (フォア文庫)

 前巻の感想ではきじゅ丸と鬼丸の関係に触れ、きじゅ丸が鬼丸という暴力をどう使いこなすかがシリーズの課題になると述べました。そのヒントになるのが金竜の力ミツウロコです。
 ミツウロコは反則とも思えるような強大な力を持っていますが、それを発動させるためには三つに分裂したウロコを託された三人が「なかよく」していなければなりません。子供向けにしてもなめきった設定だと切り捨てるのは早計です。簡単に仲良くするといっても、北条家の跡継ぎのきじゅ丸と侍の娘みさ可、庶民の吾郎では立場が違いすぎます。この三人が仲良くするためには非常に高度な感情のコントロールが求められます。コウヤでの冒険を通した感情コントロールの訓練が北条家の跡継ぎとしてのきじゅ丸を成長させました。
 しかしコウヤでの冒険は成功したものの、この物語では語られないきじゅ丸(北条時行)の運命は歴史が語るとおりです。それだけに三人と帝の息子いぶきが友情を成立させた結末が切なく感じられてしまいます。

「また、四人で、なかよくあえる日がくるよう、がんばろうぜ、大人たちの戦なんかにまけず、な?ここをでたらもう二度とあえない、みたいな顔、するなよ……するなったら!」(p91)